考えよう!年1回の決算

この記事は事業者向けの記事です。

はじめに

開業して間がない場合や赤字が続いている場合は、少しでも費用を抑えたいと考えますよね。この費用のうち、税理士に支払う報酬を少しでも下げたいと思っているかもしれません。基本的には税理士に支払う報酬をカットすること自体はオススメしません。私が税理士だからというわけではありません。その理由については、下記の記事にも記載しておりますので、気になる方はご確認ください。

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税理士に支払う報酬を少しでも下げたいと思ったときに、報酬が安いプランとして「年1回の決算」というものがあります。私の事務所でもこのプランはあります。税理士に支払う報酬をカットすること自体をオススメしていないのに、なぜこのプランがあるかというと、このプランを利用したほうがいい方と悪い方がいるからです。

この記事では、「年1回の決算」のメリットとデメリットを考え、ほんとに「年1回の決算」があなたにあっているのか検討して頂くために記載しました。

そもそも年1回の決算って?

「年1回の決算」のプランとは基本的にどのようなものでしょうか。会計事務所・税理士事務所によって細かな違いがあったり、違うオプションがあったりしますが、おおまかには次のとおりです。

①申告期限の前に1年分の経理処理を確認してもらう。
②①の状況によって、1度打合せを行う(もしくは、打合せなし)
③申告書を作成し、提出してもらう。

ですから、期中に経理処理を確認してもらうことはありません。また、期中で相談したいことがあっても基本的には別料金となります。

年1回の決算のメリット

「年1回の決算」のメリットは、あなたもご存知のとおり、報酬が安い点にあります。「格安」などのキーワードで検索すると、このプランがよく出てきます。

上記以外のメリットとしては打ち合わせ回数が少ないことが挙げられます。本業が忙しく、あまり時間がとれない場合に向いています。しかし、前提として経理処理が正しく行われていることが前提となります。経理処理が正しくできていない場合は、1年分すべて修正する必要があったり、確認事項が増えるので、かえって大変になります。

年1回の決算のデメリット

「年1回の決算」のデメリットは、大きくは次の3点になります。

①納税額が申告期限ぎりぎりまでわからない
②年内に提出しなければいけない届出などが提出できない
③経営成績がわからない

納税額が申告期限ぎりぎりまでわからない

1年分の経理処理を確認してもらうわけですから、1年分の経理処理が済んだ時点でデータを税理士に渡すことになります。

あなたが法人の経営者であれば、基本的に申告期限まで2ヶ月しかありません。請求書などがすべてそろって経理処理を終えるのが中旬頃だと、どんなに早くても申告期限1ヶ月前に納税額がはじめてわかることになります。

あなたが個人事業者であれば、申告期限が3月15日までですので、法人の経営者に比べると時間がありますが、大きく変わりません。

赤字だから問題ないと思われたかもしれませんが、注意すべきは消費税です。たとえ、赤字であっても、意外と金額が大きくなるのが消費税です。

もし、あなたが消費税を納めているのであれば、「年1回決算」はオススメしません。

年内に提出しなければいけない届出などが提出できない

基本的に消費税に関連した届出は会計期間が終わるまでに提出しなければなりません。ですから、この届出を出しておけば、
・来期に納める消費税額が減る
・来期に消費税が還付される
といった場合でも手遅れになります

もし、あなたが消費税を納めていなくても、消費税の還付については、建物や機械など金額が大きな買い物をするような場合など、該当することがあります。

もちろん、消費税以外に所得税や法人税についても届出の期限が申告期限と異なるものはあります。

会計期間中にある程度見てもらっていたら、税理士から指摘を受けられるような場合でも、「年1回の決算」の場合は上記の対応ができなくなります。

経営成績がわからない

わたしが一番懸念することは、期中の経営成績がわからないということです。あなたが経理の知識があって、試算表などをみて経営成績を判断することができるのであれば問題ありません。しかし、どこをどのように見て、いいのか悪いのか、悪いのであればどこを改善すべきか判断できていますか?事業者であれば、正しく経営成績を判断する必要がありますし、わからないのであれば、専門家の意見を聞いてほしいと思います。

どんな人に年1回の決算がオススメか?

では、どんな人にオススメかというと、
①経営成績を見る必要がない人
②期中、税務的な判断がほぼ必要ない人
ということになります。

たとえば、最近人気のサブスクリプション契約を結んでいる場合や不動産賃貸をしている場合のように取引がほぼ一定で利益が確定しているような場合です。はじめに計画してしまえば、取引自体が大きくかわることがないので問題がないと思います。もちろん、取引自体が大きくかわるような事柄がある場合は事前に税理士に相談することをオススメします。

あなたは上記に該当していますか?「年1回の決算」プランを選択する場合は慎重に検討して頂きたいと思います。