この記事は在庫がある事業を行っている経営者・経理担当者向けの記事です。
在庫の計上をしていますか?
「決算に在庫を計上していますか?」との質問に対して、あなたは「そんなのあたり前だよ!」と答えますよね?でも、「月次決算で在庫を計上していますか?」との質問だったら、どうでしょうか?
在庫を計上するためには、在庫として残っている商品や材料などの棚卸資産や貯蔵品の数を実際に数える必要があります。商品や材料の数が多ければ多いほど、たいへんな作業になります。
また、商品や材料の種類ごとに単価が違いますので、商品や種類ごとに単価を把握する必要があります。
さらに、同じ商品や材料でも時々によって単価がかわることがあります。棚卸資産の評価方法として、税務署になんらかの届出をしていない場合は、最後に仕入れた時の単価になります。
会社の規模が大きくなればなるほど、在庫の数も多く、金額も大きくなるので、在庫管理を徹底することの重要性を認識しています。だから、在庫管理するためのソフトを導入し、月々、理論上の在庫を計算し、実際に残っている在庫と突合せしたり、在庫の分析をしています。
在庫の金額も大きくないし、
在庫の計算には手間暇もかかるし、
というわけで、結局在庫を計上していないのではないですか?
実際に在庫を数えたり、単価を調べたり、計算するのは手間というのはわかります。
ですから、概算(予測値)で在庫を計上しましょう!
概算なんて意味がないと思うかもしれませんが、そんなことはありません。
まず、在庫を計上しないことでどんな影響があるのか説明した上で、どのように概算で在庫を計上するのか説明したいと思います。
決算を間違えていますので、修正申告が必要になります。修正申告は確定申告と処理の仕方が異なりますので、自力で処理するのは難しいと思います。すぐに税務署もしくは税理士に相談しましょう
利益に与える影響
在庫を計上しないことで利益が大きく変わります。
例えば、普段は在庫が10あるとします。ですから、月初も10、月末も10の在庫があります。さらに、月々の仕入は100だったとします。そうすると、
となります。
もし、当月の注文がたくさんあって、翌月たくさん売れそうだから、たくさん仕入を行うとどうなるでしょう。仮に、当月にいつもの仕入100以外にさらに仕入を+1,000して、この1,000が在庫になっているとします。
そうすると、本来は
となるはずです。
しかし、在庫を計上していないので、
となってしまいます。
売上原価が極端に増えるので、売上から売上原価を差し引いた売上総利益が極端に減り、最終的な利益も極端に減って見えます。
お金に与える影響
在庫を計上しないことで、お金(資金繰り・キャッシュフロー)にも影響を与えます。
在庫は商品を販売するまでお金になりません。お金を使って仕入をして、在庫になっても、まだお金ではありませんよね?もちろん、販売するために必要なものであることに間違いはないのですが、在庫を多くかかえると商品を販売するまでお金は減ってしまいます。
上記と同じ例で考えてみましょう。ここでは、わかりやすいように商品を販売したら、販売した時点で商品代金を受け取ることができる場合を考えます。
普段は在庫が10あるので、お金が10使われている状態です。月初の在庫10と、仕入の100のうち在庫10以外は商品を販売しているのでお金になっています。ですから、まだ商品を販売していない在庫の10のみがお金になっていないということになります。
さらに+1,000の仕入をして在庫になっている場合は、本来、お金はその時点+1,000使われている状態になっています。
しかし、在庫は10なので、お金が在庫に使われていることはわかりません。このことを把握するためには、損益計算書もあわせて確認し、仕入が大きくなっていることを把握しておかないとわかりません。
どうすればいいのか?
上記のように、棚卸を計上しない場合、損益計算書や貸借対照表、さらにはキャッシュフロー計算を複合的に細部まで判断しなければならず、経営上の判断を鈍くすることになります。そのため、棚卸を計上することが重要になります。
では、実際に棚卸を計算せずに概算で棚卸を計上する場合、どうすればいいのでしょうか。
②当期の売上に売上原価率をかけて、売上原価を計算する
③月初の棚卸高と売上原価から月末の棚卸高を計算する
上記の3つの手順を踏んで月末の棚卸高を概算で計算します。そして、月々、月末の棚卸高を洗い替えしていきます。
もちろん、厳密には異なりますが、ビジネスの形態が大きく変わらない限り、極端にかわることはないでしょう。
月々の経営成績を正しく把握するために、ぜひ月末の棚卸高を月々計上しましょう!